継花11

水彩色鉛筆で描いてます

継花10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めての誕生日

 

 

京に来てから一年になろうとしていた。葉月の中頃

「おはよう、紫姫 今日も暑いね」
「おはようございます、花梨様 まだ葉月の中頃ですものね」
「そうだよね、朝夕はだんだん涼しくなってきてるけどね」
(そうだ!そろそろ泰継さんの誕生日だ。)
「どうなさいました?」
「うんん、なんでもない」
(どうしようかな、いろいろ用意して泰継さんを喜ばせてあげたいな)
本人に直接聞いてみることにした。
 
仕事や用事が無いときはいつも会いに来てくれる。
「こんにちは、泰継さん」
屋敷の門の前で手を振って近くにくる。
「待っていたのか」
自然に微笑が浮かぶ。
「はい、今日は、涼みに行きませんか?」
「わかった」
しばらくして糺の森の小川の近くについた。
「川の近くはやっぱり涼しいですね」
「そうだな」
「泰継さんに聞きたい事があるんですけど」
「なんだ?」
「んと、泰継さんの欲しいものってなんですか」
「欲しいもの、何でもよいのか」
「はい♪」
「私の欲しいものは、花梨以外に他にない」
じっと見つめて手をとった。
「あっあの、えと、そ、あ、ありがとうございます」
顔が赤くなっていく、真直ぐな言葉はうれしいが、まだ恥ずかしさのほうが大きい
それに、今は物を言ってほしかった。
「問題ない」(←何が?)

しばらくして、落ち着いた花梨は
(これじゃダメだよ。何か無いかな?そうだ!!)
「泰継さん、泰継さんの必要で無いと困る『物』ってなんですか?!」
こんどは《物》を強調して言ってみた。
「困るもの?」
またも、じっと見つめて口を開きかけたのを遮って
「はい、えと、服とか櫛とか、そのいろいろ今使ってるもので壊れた《物》とか」
「壊れたもの?ふむ、最近 筆の書き具合が悪くなってきたな」
(それだよ!!それ、決まったわ)と内心の喜びを隠して
「そうなんですか」
「なぜそのようなことを」
「きっ気にしないで下さい、あ、魚がいますよ」何の魚かな〜、とその場をうまく?ごまかした。 

次の日、花梨は、泰継によさそうな筆を探して市を歩き回った。
市には、たくさん筆がありはしたがいいと思うものは、みな高かった。
筆は文字を書く為にあるもの、貴族などが主に使う物は、市にならんでてもかなりするものが多い
花梨は、お小遣いを紫姫から貰ってはいるが、それで買えそうに無かった。
(買えないなら手作りすればいい)と発想を変えて、今度は筆の作り方を聞いて回った。
「こんにちは、すごくいい筆ですね」と言ったら
皆気をよくして作り方や、私の筆が京で一番だと自慢話が聞けた。
そして、材料調達がはじまった。

まずは、細い竹を取りに行って、持つところは、桜の木 それを何日もかかって削って
上の方の持つ所に、翡翠と琥珀、水晶石の細かく砕いたものを塗り箸みたいに埋め込んで、
漆を塗り重ねて綺麗に研いだ。
てっぺんには、泰継さんの首飾りの玉に似た石を丸く削って磨いて、はめ込んだ。
毛の部分は、素人に上手く作れるわけも無いので
北山の動物達から分けて貰った毛を、市で知り合った筆職人さんに頼んで作ってもらった。

そして、三日前にようやく出来上がった筆を菊花香を燻らせた木箱に入れて淡香色のリボンをつけた。
(ふふふ、か・ん・ぺ・きv)部屋の中から嬉しげな鼻歌が流れていた。

ついに、9月9日がやってきた。部屋は紫姫が菊の節句、重陽の節句という事もあって整えてくれた。
(奇数は陽の数であり、陽数の極である9が重なることから「重陽」と呼ばれる。
陽の極が2つ重なることからたいへんめでたい日とされ、邪気を払い長寿を願って、菊の花をかざったり酒を酌み交わして祝う。)
花梨は十二単は重いので五つ衣を着て泰継を出迎えた。
「いらっしゃい、泰継さん」
嬉しそうに立ち上がって出迎え向かい合って座ると、木箱を差し出して
「泰継さん、お誕生日おめでとうございます。えへ、プレゼントです」
「誕生日、プレゼント?」
「今日は、泰継さんが生まれた日でそのお祝いの贈り物なの」
「祝いの贈り物」
りぼんをほどき箱を開ける。
「これは・・・筆か、見事な細工だ。」
少し驚いた顔をして、手に取った。
「ホント!私が作ったの、あ、でも毛の所は職人さんにして貰ったんだけど」
「花梨が、そうか、とても暖かい気を感じる、ありがとう花梨」
泰継が喜んでいる様子を見て花梨は嬉しくなった。
「後で、もう一つあるの」
「?後でか」
「はい、後でです。」 そう言うと赤くなって俯いた。

用意してもらったご馳走を食べた後ゆっくりしている時、花梨がそわそわしはじめた。
「どうした」と聞くと
「えと、さっき言った、その」
「もう一つの贈り物のことか」
こっくんと頷くと、
「用意してきますからちょっと、まってて下さい」
「わかった」

少しして頭に布を結んだ花梨が戻ってきて・・・
「花梨?」
「・・・///」
状況を理解できず花梨に問う、花梨は泰継の膝の上で
「・・・ン・です。」
「?聞えぬが」
「プレゼントです///」
真っ赤になって答えた。一瞬驚いた顔をして、
「理解した。でわ有り難く貰うことにしよう」
満面の笑みを浮かべてその中身を確かめるべくりぼんを解きはじめた。




泰継さん、お誕生日おめでとうございます。
このサイトを作って二度目のお誕生日、最後まで読んでくださった方
ありがとうございました。もう少し文才があればいいのに拙い文で失礼しました。